思ひそめき四つの時には花の春春のうちにもあけぼのの空(京極為兼)

京極為兼は言わずもがな、停滞が明らかであった中世和歌の局所的ではあったが最後の輝きを放った「京極派」の生みの親だ。宗家二条派に抗戦すべく、はやくも三十代で歌論「為兼卿和歌抄」を著したが、理想の歌風が成り、勅撰集に結実するのは六十歳も近くになったころである。この境遇は源俊頼に似ているかもしれない。現況をなかなか打破できないもどかしさ、これの歌への表れ方が類似しているのだ。
『思いはじめた春夏秋冬、なかでも花ほころぶ春は格別だ。今がその春、そのあけぼのの美しい空』。どうだろう、正直分かりづらい。いや分かる、新風を試みていることはいたいほど。だが言葉の切れも悪く、情景も煩雑でほとんど成功していない。伏見院と永福門院、彼らとのチームワークがなければ京極派は起こりえなかったのだ。

(日めくりめく一首)

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