み吉野の山した風や払ふらむ梢にかへる花のしら雪(俊恵法師)

今日の歌人は俊恵法師。父は金葉集の選者「源俊頼」、方丈記などの執筆でも有名な「鴨長明」は歌の弟子であった。父とは17歳で死別しそのまま仏門に入ったというが、もし彼が堂上歌壇に留まっていたら御子左家が勃興する機会はなかったかもしれない。長明の「無名抄」に俊成と自賛歌について論じている段があるが、このやり取り見る限り、俊恵の方がはるかに的確※であるのだ。「幽玄」は俊成の専売特許のように思われているが、その本質にいち早く気付いていたのは俊恵だったのかもしれない。今日の歌にもそれが表れている。花を白雪に見立てるのは常套的だが、それを風が払って「梢に帰る」とした。とたんに物語性を帯びて、情趣に響く歌となった。

※「景気を言ひ流して、ただそらに身にしみけんかしと思はせたるこそ、心にくくも優に侍れ」(無名抄)

(日めくりめく一首)

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