既視源氏物語 ~古今集恋歌の光る君~ その23「愛が恐怖に変わる時」

649「君か名も我なもたてじ難波なる みつともいふなあひきともいはし」(よみ人しらす)
650「名とり河せせのむもれ木あらはれは 如何にせむとかあひ見そめけむ」(よみ人しらす)
651「吉野河水の心ははやくとも 滝のおとにはたてしとそ思ふ」(よみ人しらす)
652「恋しくはしたにをおもへ 紫のねすりの衣色にいつなゆめ」(よみ人しらす)

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私は人道を外れた行為を犯した
実の兄の女を奪ったのだ
初めから分かっていたことだったのに
今や恐怖が先に立つ
この関係が表立つことは、なんとしても避けなければならない

どうか愛しいひとよ
私と逢ったことは口が裂けても言わないでくれ
私を恋しく思うのであれば、心の中でひっそりと思っていてくれ
そう、紫の根擦りの衣の様に、顔色になぞ決して出さないと約束してくれ
私も断じて口にすることはない
あなたのことを

一途で純粋な恋心は、もはや罪業の恐れへと変わってしまった

(書き手:歌僧 内田圓学)
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