既視源氏物語 ~古今集恋歌の光る君~ その10「深淵の思い」

古今和歌集 恋一【535】「とふとりのこゑもきこえぬ奥山の ふかき心を人はしらなむ」(よみ人しらす)
古今和歌集 恋一【537】「相坂の関になかるるいはし水 いはて心に思ひこそすれ」(よみ人しらす)

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あのひとは兄の婚約者。
抱いてはならぬ、恋心。
とても人に明かせるものではなく、思いしのぶより他はない。

ただ、どうかあのひとよ知ってほしい。
鳥達の声が聞こえぬあの奥山のように、この深い深いあなたへの思いを。

知ってほしい。
それだけがせめてもの慰め。

(書き手:歌僧 内田圓学)
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