源氏の恋文「からころも」


「からころも君が心のつらければ 袂はかくぞそぼちつつのみ」

本当にあなたは薄情なお人

ご自分の事しか頭にないのですね

いつも思い慕って鳴いてばかりおります

私の衣は袖も袂も濡れに濡れ、干くひまさえありません

ただただお待ち申し上げております

今夜も明日も変わらずに

(末摘花)


感性の鈍い女ほど哀れな存在はない。
恋文に陸奥紙を選ぶ理由がどこにあるのだろう。
そこに薫香を深くたきしめるなんぞ痴態の極みだ!

恋文にはその人となりが全て表れる、
末摘花の姫とはこういう女なのであろう。

だが哀れも度が過ぎると魅力の一つになるのだろか?
源氏はこの女を生涯庇護した。
その理由は優しさといった美談では決してないだろう。

(書き手:歌僧 内田圓学)


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