夏を書く「短夜」

「まだ宵の月待つとても明けにけり短き夢の結ぶともなく」   (後鳥羽院)

『日暮れの月を待っていたのに、あれよという間に夜は明けてしまった。短い夢を見ることもなく』。夏の短夜の歌であるが、終始恋の匂いが漂っている。月は男の暗喩、待つ女はそれを見ることなくはかなく夜は明けてしまうのだった。こんなことならせめて夢にすがったのに、短い夜はそれを結ぶことも許さない。救いようのない嘆息に、ひたすら待つことを強いられた女の苦しさが伝わる。詠み人は後鳥羽院もちろん題詠であったろう。題詠では完全にそれに即して詠むことが求められるが、後鳥羽院は見事に千変万化してこの歌では悲愴の女になりきっている。後鳥羽院の上手さの根本は、この器用さにあると言っていい。