ホトトギスといえば、松浦清の「甲子夜話」に載る川柳三句が特に知られるだろう。こう言って分からなければ鳴かぬホトトギスを信長、秀吉、家康の天下人がいかにするか、三者三様が歌われたアレだ。それでいくと今日の歌は家康の趣向に最も近い。『今は聞こえなくても、ここをホトトギスの初音を待つ場所としよう。山田の原の杉が群がる林を』。詠み人は西行、上の川柳に劣らずこの歌にも詠み人、西行その人らしさがにじみ出ている。思えば不思議なものだ、和歌や川柳、このわずかな詩文に叙景抒情に加え千差万別の個性だって表現できるのだから。短詩型文学は文学に当たらないと批判もされるが、まさに短いことが文学たらしめている。
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