『鳴海潟の漁師が紐を結ふ夕暮の時分になると、袖を翻す風の向うに帰る千鳥が鳴いている』。詠み人は源通光、兄に新古今撰者の一人通具がいる。しかし定家らを庇護した九条家の政敵、源通親の子であることがよほど恨まれたか、百人一首はもちろんその力量に比べて勅撰集の入集も少ないように思う。ではその腕前はいかほどかといえば、今日の歌に優れていよう。「結ふ」と「夕」、「成る」と「鳴」の掛詞、「袖」に「結ふ」の「かえす」の縁語を組み、言葉と風景の両面から技巧を尽くす。数々の新古今歌でも極上のシュールだろう。
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