楝(あふち)咲くそともの木かげ露落ちて五月雨はるる風わたるなり(藤原忠良)

よみ人:藤原忠良 、所収:新古今和歌集

紫陽花は八代集には見えない、そのようにご紹介した。では平安歌人は憂鬱な梅雨の季節、何に心を寄せたのか? その答えのひとつが「楝(あふち)」である。センダンと言い換えた方が分かりいいだろうか、初夏に紫色の小さい花をつける。『楝の花咲く木陰にシトシトと露が落ちている、五月雨のあとに穏やかな風が吹いているようだ』。目にも鮮やかな見事な写生歌であるが、お天気以上に気持ちの晴れやかさが伝わってくる。詠み人の忠良だが、従兄弟に藤原良経、叔父に清輔がいる。と聞けば、なるほど御子左と六条藤両家の声調が美しく調和しているようではないか。

(日めくりめく一首)


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