梅の花にほひをうつす袖の上に軒もる月の影ぞあらそふ(藤原定家)

これまでの梅歌をつうじて、詠み方の傾向というものが掴めただろう。匂いの風雅さらに雪や鶯との取り合わせ、実のところ梅に限らず和歌では、ひとつのモチーフに対してそれがもっとも美しく映える場面が規定されているのだ。ちなみに桜の場合はこれが散り様となる。だからこの“規定”さえ順守すれば、おおよそ最低限の歌は詠めるということになる。これは野暮にとっては便利なアンチョコであり、風雅の人には超えるべき前提となる。今日の歌はどうだろう、袖はかわらず梅が香っている。だがそれは争っている、わずかに漏れた月影と激しく競い合っている。いずれが美の支配者であるかを。作者は藤原定家、これぞ新古今歌の白眉である。

(日めくりめく一首)

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