思ひかね妹がり行けば冬の夜の川風寒み千鳥なくなり(紀貫之)

よみ人:紀貫之 、所収:拾遺和歌集

ひたすら待つしか手段がない女に対し、男は少なくとも求め彷徨うことができる。いつの時代も男の気楽さは罪だ。『恋しさに耐え兼ねて彼女のもとへ行く途中、冬の夜の川風が寒いので千鳥が鳴いている』。風景は寒々としているが、こころはほの暖かい。ちなみに「妹がり行く」とは万葉来の古風な言い回しで、シンプルに愛しい女性の所へ行くという意。ようするに浮足立っているのだが、それを俗にしないいい歌だ。

さて今日の歌から場面が変わる、浜の「千鳥」である。和歌の一季一景は厳密で、千鳥は冬にしか詠まれない。鶯、ホトトギス、雁、これら春夏秋の渡り鳥(鶯は漂鳥)と暫し読み比べをしてみよう。

(日めくりめく一首)


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