思ひかねうち寝る宵もありなまし吹きだにすさへ庭の松風(藤原良経)

「松風」は昨日鑑賞したような侘しき情景と「待つ」という語が掛けられることから、恋歌で用いるのが適当だ。今日の詠み人は藤原良経、寂寞の余韻を歌わせたら並ぶものがいない名手による、恋の松風をご紹介しよう。
『待ちぼうけに堪えきれず、これからは眠ってしまう夜もあるだろう。そんな時は松風よ、少しでも静かに吹き衰えてくれ』。採られたのは新古今歌の恋四、題にして「遇不遇恋(あひてあわざるこい)」言わば破局が見えかけたころの恋だ。あの人はもう来ない、半ば諦めながらも「松(待つ)」心を捨てきれない、繊細な心のゆらぎが表現されている。さすが良経、期待通りの名歌である。

(日めくりめく一首)

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