夕立の雲もとまらぬ夏の日のかたぶく山にひぐらしの声(式子内親王)

いい歌というものは、詠まれた情景がすんなりイメージできる。しかしそれだけでは世々に語り継がれる名歌とはならない。そこには「あはれ(感動)」が必要なのだ。ところで感動とは「心が動くこと」である、だから決まってセンチメンタルである必然性もなく、今日のような風景歌でもそれは十分に得られる。

夏の盛り。大地を焦がす太陽を、束の間、一群の夕立雲が駆けてゆく。酷暑の苦患はいずこ、雨上がりの夕暮れの山々に蜩が鳴き響いている、穏やかに。あぁ、私は生きている! この歌からもたらされるのは人生讃歌の感動だ。

(日めくりめく一首)

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