夕立の雲もとまらぬ夏の日のかたぶく山にひぐらしの声(式子内親王)

いい歌というものは、詠まれた情景がすんなりイメージできる。しかしそれだけでは世々に語り継がれる名歌とはならない。そこには「あはれ(感動)」が必要なのだ。ところで感動とは「心が動くこと」である、だから決まってセンチメンタルである必然性もなく、今日のような風景歌でもそれは十分に得られる。

夏の盛り。大地を焦がす太陽を、束の間、一群の夕立雲が駆けてゆく。酷暑の苦患はいずこ、雨上がりの夕暮れの山々に蜩が鳴き響いている、穏やかに。あぁ、私は生きている! この歌からもたらされるのは人生讃歌の感動だ。

(日めくりめく一首)

和歌の型・基礎を学び、詠んでみよう!

オンラインで和歌の型・基本を学び、自身で詠み、月次の歌会で仲間と高めあう「歌塾」開催中!

季刊誌「和歌文芸」
令和七年春号(Amazonにて販売中)