冴ゆる夜の真木の板屋の独り寝に心砕けと霰ふるなり(藤原良経)

今日の歌も面白い、「霰(あられ)」だ。『寒々とした夜、真木の屋根に霰が打ち付ける。心をもっと痛めよと言わんばかりに』。詞書きに記された題、「閑居聞霰」に適った隠遁の侘しさが描かれている。

これまででお気づきかもしれないが和歌の語彙は思いのほか少ない。時代が下るにつれて多少は増えるが、それも知れたものだ。そりゃ物に溢れた現代と比べれば詠むべき対象も限られていただろう、しかしそれが理由ではない。平安歌人たちは早くから審美眼に優れていた、だから和歌に相応しい景物を端から厳選して積極的に増やすことをしなかったのだ。

(日めくりめく一首)

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