「花橘」が詠まれたこの歌、古典ファンであればそらんずる方も多かろう。古今集では題知らず、よみ人知らずで採られるが、伊勢では第六十段に「むかし男(業平)」の歌として物語が載る。詳細は出所に譲るが、女(元妻)が酒の肴に出した橘に、女の薫物の香(花橘)を思い出し、自分がそれを知る男=元夫であることをほのめかすというものだ。たわいもない内容だが疑問が残る、それは初句「五月待つ」だ、これがなくともプロットは通る。実は「五月待つ」を据えて、男は女を待っていたことを訴えているのだ。だからこそ、女は恥じて尼になるというオチが六十段にはつく。花橘とは女の面影であり、男自身だったのである。
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