「上毛の霜よ! 下の氷よ!」、古典和歌においてこのようなリフレインは極めて珍しい。様々な憶測を呼ぶ崇徳院の名歌にあって、これぞ随一の絶唱といえよう。鴛は「鴛鴦夫婦」という言葉があるように男女の仲睦まじく互いについた霜を払う。歌はこれに相手がいないため、上毛には霜が積もり虚しく氷に包まれてしまっている。「浮き」には当然「憂き」が掛かっていよう、つまりこれは鴛に身を譬えた己の様なのだ。圧倒的な孤独に甘んじてしまう、凍てついた心の代弁なのだ。後に魔王となり果てる※崇徳院の闇がここにある。
※「此経を魔道に廻向して、魔縁と成って遺恨を散ぜん」(保元物語)
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