写実に徹底していた京極派の名手も、ついに耐え切れず声にしてしまった。『いつのまにか垣根の草も青みが掛かって、こんな霜の下にも春は近づいてきたんだなぁ』。「春や来ぬ!」このような素直すぎる感情は、三代集こそ数多あれ時代が下り和歌が一個の作品性を強くするにつれほとんど詠まれなくなった。代わりに心象風景が取って代わるのだが、おかげで和歌は奇々怪々な装いを帯びる。写生を旨とする京極派でも四季歌にあからさまな感情を混同することは少ないが、しかし伏見院は歌ってしまった。春が来た! はやる気持ちはだれにも止められないのだ。
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