うたた寝の朝げの袖にかわるなりならす扇の秋の初風(式子内親王)

今日の歌もまた趣向が冴えている、式子内親王である。昨日までの秋風は野辺をさやいで、目にも耳にも広々と感じられたが、式子のはいたってこじんまりしている。何と言ったって、『自分であおいだ扇の風』に秋を感じるというのだから。しかもそれは『朝のうたた寝から目覚めた袖』に通ふ風だと言うのだ。こんな歌、伝統に寄りかかってボーっと生きていたら決して作れない。式子内親王に常にある歌の新しさ、これはすべての彼女の身近な体験から生まれている。唯一無二、式子の歌は式子にしか詠めないということだ。

(日めくりめく一首)

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