和歌所では、ML(メーリングリスト)で詠歌の交流を行なっています。
花鳥風月の題詠や日常の写実歌など、ジャンル不問で気の向くままに歌を詠んでいます。
参加・退会は自由です、どうぞお気軽にご参加ください。
→「歌詠みメーリングリスト」
今月のピックアップ三首
「歳の果てに天と海とを仰ぎみれば 平かに成る何時の代々にも」
「あはてゝものこす日数に限りあり ゆっくりゆっくり春はゆっくり」
「何と無く山の尾の辺も白むれば 冬も吾妻に立ち始めけり」
今月の詠歌一覧
| 我夢に君や眠るや常盤なる 松陰やすき銀河の最果て |
| 風騒ぎ土曜の夜に人は無し 黄葉吹き上げて歳を追ひゆく |
| まだゆかぬ夏をおもへり年の瀬に へしこつきつゝ語りあふかな |
| 時ならぬ実とこそ聞けばたわゝなる 君が心は恒に頼も |
| 時じくの実にあらまほし浮世には こぞににるべき年もなければ |
| 同じくは浮世の盃を飲み干して 時じくの君に言傳てをせん |
| 高屋の面を連ねし小路抜けて 渉る空風車軸の光 |
| 東京にこの十二月に雨が降る 往人とゞめえず是を如何にせむ |
| 雪雲に花ぞさき沿う里の 冬紅白かざし歳をむかへん |
| 年の瀬のこの人波をわきてゆかん 白金まとふ冬のものゝふ |
| もち花をかざす人らの花笑みに 慌ててきたる春は盛りなり |
| あはてゝものこす日数に限りあり ゆっくりゆっくり春はゆっくり |
| 浅茅生に熊もこもれりほぐれゆく 春見の炬燵里の白雪 |
| 朝日照る六曲一双の硝子窓 堅く絞りて冬を研ぎゆかん |
| エイと詠みアイと哀しみ歌よむは アンドロイドの夢にやあるらむ |
| 虚ろにも見える瞳の瞬きに 億光年の孤独は宿り |
| ハルや問ふ我懐かしのまほろばを 爾の夢に映して見せよ |
| 蝋梅の雪山風を透き通す 甘き花色時を映して |
| 天つ国風や届けむ花の香 浮かぶは添いて眺むる吾が子 |
| 時の香を映して透る蝋梅は 甘きを宿し眠り居るかな |
| 乘り換へるワンマン車掌の訛声 小雪舞ふ駅舎で饂飩を啜り |
| 乘り換へた途端に歸へる言葉尻 お國言葉に緩む頬かな |
| 風花の煌く暮れの午後の空 代は隔つとも春をわすれじ |
| 雪匂ふ孤驛に立てる候ならん 歸客迎へる里の初花 |
| けふよりは光充ちゆく野を思はむ 氷雨慈しむなつかれの草 |
| まことかと驚き見つれば雪原に 魅惑のスウィーツ栃の紅姫 |
| 空風の騒ぐ最中を駆けてゆく 君十八の關は越えなむ |
| 凝る霜も明けの時雨にゆるみゆけば 春をまちつゝ筆を擱く哉 |
| 日のひかりうけ常盤木にたわわなる 冬枯れに映ゆときじくの実 |
| 雪雲る里の屋(おく)にて咲きほこる 春待ちかねつ紅白の花 |
| わが推しは冬の夜空ぞ南天に 白金(しろかね)布を纏う武士(もののふ) |
| みつけたり君の番ぞと落ち葉踏む 音を聞きつけ秋は微笑む |
| 百代の旅の伴(とも)なり白銀(しろかね)の 海に流るる黄金(こがね)の文は |
| 滋賀県大津市・蔵元平井商店 浅茅生(あさじを)熊蟄穴(くまあなにこもる) |
| 有明の月やは映す影ひとつ ただ霜だけが下りて輝き |
| 天(あま)つ国風や届けむ花の香 浮かぶは添いて眺むる吾が子 |
| ふるさとに向かう列車に似たりける 訛りたよりにのぼる魚らは |
| 過客や何を頼りに帰り来む 水の清きか雪の白きか |
| 今日(けふ)こそと思ひわたれる人枯れは かくと思ひし冬日のレール |
| 此の花の色も香をも知るなれば 笑みを咲かつ待つや春べを |
| 枯れ果てし野に冬萌えの葉ひとひら 陽(ひ)に起こされし乃東(なつかれくさ)や |
| にぎはへる屋(おく)のいとしき雪の野に 早や春告げる栃の紅姫 |
| 木枯らしにあわせ冬告ぐ声やする 落ち葉踏みしむ片角の鹿 |
| 舞い落ちる十二月冬雨が 冷たく響く冬は悲しき |
| 姿なき歌であれども詠み合えば 言葉の間に笑顔満ちたる |
| 六曲の屏風ほどある窓ごしに 射す陽は白く明けの雪かと |
| 一叢の芒のごとし雲間より 射す陽も枯れて冬ぞさびしき |
| 平成の内に耕し田に撒くは 言の葉の幸一陽来復 |
| 山深く冬とも春とも知らぬ枝に 梅をおもひて雪咲き香る |
| 藤衣井筒にもたれ思ひだす 乃東の生ずるごとく |
| 歳くれて三又の角枝落ちけらば 春には四又誰がおしへむ |
| 新しき年数え待つ可惜夜は 願い枕に朝を迎えき |
| 霜天の月残りたる空になる すずかげの実は声も枯れ果て |
| いにしえの石蕗の花時雨雲 もの寂しげなだんまりの花 |
| 月十二節季候たし百八つ 旧年去りて新年来たり |
| 六出花五穀の精となりせなば 風に頼みて夕日やらばや |
| 時過ぐる流れも速き夕雲に 移ろふ影の色惜しむかな |
| 風寒み紅葉拾へる右手には 色暖かき秋の夕暮 |
| 錦成す秋の去るまでひとときの 木の間やさしく鳥の鳴くなり |
| 彩れる鶍の声は風枯れの 空しき庭の心知るらむ |
| 秋去らば早みて瀬にも留めあへず 錦を末に待つにかなしも |
| 遠き日に茜の空の暮るゝまで 集めて赤き秋の山苞 |
| あくがれて露振り分けて野に狩し 遠き遊びの実葛かな |
| 水底は儚き世にぞ安らへる 眺めるのみの澄めるつきかげ |
| いつかまた花の後には緑見る 名残の枝に春を待つかな |
| 思ひやる錦流るる来し方を 清みて後にしもあらばこそ |
| 白河の淀まぬ末を思ひいて 流れ越すとも逢はんとぞ思ふ |
| 風の丘は暮れ行く時に切なくも 空を仰ぎて揺れる秋桜 |
| 秋桜の春の色して秋贈る 冬の兆しの風の行く先 |
| 澄み冴ゆる夜空に舟の漕ぎ渡る 綺羅の砂子と雲の間に間に |
| 世を忘れ遠き果てなる月見れば 昔も心の変はらぬものを |
| 夕されば薄き明かりの暮れ果てて 遠くに冴ゆる月宿るらむ |
| 風寒み色なほ薄く暮れる日に 眺む光のあはれなるかな |
| 時を越え言の枝葉の照らされて 同じ光の望月のもと |
| 黄葉敷く冬の明かりの浅き道に 目映き頃の光とどめて |
| 歳の果てに天と海とを仰ぎみれば 平かに成る何時の代々にも |
| 歌に寄す代々の景色の花姿 眺む心の美しかれとや |
| 思へども届かぬ声を空に浮けて 凍れる音の霜と散るらむ |
| 天の下の冬に心の乾き見て 雲を雫に集む夜かな |
| 忘れ路の廃れし軌の行く宛ても 雪に泥みて春を待つかな |
| 雲のなき澄める空には月冴えて 光を留めて庭に置くかな |
| 去ることも打ちつるまゝに 暮れゆけば鐘の響の天に消えゆく |
| 年の暮れに天と海とを仰ぎ見れば 平らかに成る 何時の代々にも |
| ひさかたの光溢るる大海に 平らかに成る果て望むかな |
| かねのねをのこすけさにはさむそらに はるのけしきはとほさかりけり |
| はなのゑんあるがあとにもただよへる ありかまみえぬすぎさりしこよ |
| 北の海に流氷渡り春までの 凍風安み獅子の多鬣 |
| 鳥の音を纏ふ袈裟には桐灰の 「はる」の季節は遠ざかりけり |
| 寒すぎる今宵の夜は氷雨かな 指でたどるは曇りガラスを |
| 大津市は舞う雪ばかり君が里 見上げる空は女心か |
| 吐く息が白く拡がる冬の朝 見渡す景色屏風の如し |
| 風吹かば香り漂ふ梅の花 せきすいはいまきわむべからず |
| 茜さす荒野の果に日は沈む 妙なるしらべ天より響く |
| 橘を花瓶の窓の内に置き 浅き眠りよ深くあらしめよ |
| 降り積もる初雪に夢重ねては 雪踏み分けて君に会んとは |
| むすびこしのちのあしたに霜ふらば ひとがこころのかれそむとかは |
| ゑひさそふたちばなの香をしのびては すぎさりしひのほむらたちたる |
| 雲なびく冬になりせばありあけの 月さへかくるから風ぞ吹く |
| 廃線の冷たきレール冬日照り ただ森閑とゆく末もなし |
| 残照の消失点に進むなる 信濃追分冬枯れの鉄路 |
| 紫の匂へる衣を茎にたつ 乃東の西行のゑみ |
| 雪の野にいでたつ君の赤き頬 もろ手包みてさすりてしがな |
| 時雨ふる里の守り人いかあらむ 遠く去りての思ふ師走に |
| 里山に霜をく菊の風に耐へ 道ゆくわれに頷きてあり |
| 明日をまつ除夜の神々松のゑの 風の音にもこゑ請け侍る |
| 橘を守(も)る人ありとや聞こえなん 夢の玉藻も人も非時香果 |
| 惜敗と期末を越えて初時雨 のなか立ちふる梣の竿 |
| かくれんぼ雪も氷雨も夜闇の 残る落ち葉の色にまぎれて |
| まさきくや花にやすらふ日のもとに 春待つ梅の芽の動きつつ |
| 徒然と空ぞ見らるゝ末つ月 全く好き日に冬は来ぬらむ |
| 立つ冬も思ひ出づれば小春なり 風寒くとも日には得がたし |
| 神帰月日影も巡る北南 雲も時雨ぬこの頃の空 |
| かへり染む紅葉ありやと訪ねみて 小春長閑けき中津辺ノ宮 |
| 春なのか昨日の秋は先やらで 秋の桜に春桜まで |
| 桜咲く秋か冬かも忽な 春に似たりと誰か言ひけむ |
| 香りなき潮の風色飽かなくに 緑も若む小春なりけり |
| 晴るゝ江の春の光りか菊の咲く 小春に見るや金糸雀の色 |
| さらす葉の緑半ばに秋送り 朽ち葉の色も冬の蔭なる |
| 小春日や今日ぞ冬立つ昼凪ぎに 翳む小舟の沖へ漕ぐ見ゆ |
| 立冬の名は隠れねど束に吹く 肌に寒しき申や恵乃島 |
| 今朝の冬陽だまり安き春の日に 咲きし桜は秋の忘れか |
| 秋桜や穏しく揺るゝ日中過ぎ 陽の力なく晴れにけらしも |
| 久方の影薄きこと寂れたる 二心なき秋桜一つ |
| 虚ろわで暫し夢とも秋さくら 変へりもぞする午後の風吹く |
| 陽が照れり目借り時なる小春日の 咲みし秋桜夢に見るかな |
| 夢にみる風の歌詠聴くたびに 心あるにも心なきにも |
| 移ろひの幾多の蔭に隠れども また咲き撓る秋の櫻よ |
| うち陽射す見し日の秋の桜咲く 還りすむ世に在りと告げこそ |
| 秋野辺の足らぬ想ひに花はまた 遠き都を然のみ嘆きそ |
| 末つ月久しくなりぬ夢の跡 咲きて散るゝに幾世経ぬらむ |
| 秋咲良夕づく陽色映しかり 刹那に冷めて冬に入る哉 |
| うんてい?やだかっこ悪い冷たそう 壊れるきっと高いし無理 |
| 楽しいの楽しいのかな名まえ変 うんてい何て変な名まえ |
| うんていか何でうんてい何でかな.. 誰がつけたのまか不思議だよ |
| 不思議だな可笑しな気持ちおもしろい 触ってみるかどうしようもう |
| これはしご形へんだよ山の骨? 洗濯干しにしか見えないし |
| ずっといる何でうんてい気になるな こっち見ないで笑っちゃうよ |
| もういいや遊ぼうんてい誰もいないし うーんよよぅよわーもうむり |
| いたたたもう離さないで痛いでしょ 手が冷たいよ真っ赤っかだよ |
| 帰ろかな次離したら帰るから それでもいいのよくないでしょ? |
| ほら行くよよし今度こそよよ行けそ わ滑る滑るあ落ちる落ちる |
| やれやれともうまた離すうんていめ おなか出ちゃった風邪引いちゃう |
| ぽかぽかだあれ何でかな笑っちゃう うんてい何てさ変な名まえ |
| なるほどね雲のはしごかおもしろい 雲のはしごね渡ってみるか、 |
| 耳に為る遊具と話すひとり子の 雲の梯子の可笑し楽しき |
| この頃の冬の日数の秋ならで 遅れ紅葉も色付きにけり |
| 時しもあれ盛り紅葉を思へこそ 年の色見に入りやしなまし |
| 分けて行く小春日和の道奥は 入りて明るき谷影の色 |
| 入りつ日の色は闌打ち延へて 映ゑる川面に萌ゆる紅葉葉 |
| 濃染の紅葉彼方此方火の燃ゆる 此の感けるに息を呑むかな |
| 紅に紅緑は緑黄は黄 葉分けの風も賑はしきかな |
| ひらひらと風に頻舞ふ紅は 降り敷く紅葉散らまく惜しも |
| 先泥む浮き葉流るゝ霧ふりの 岩間た広み淀み藍なす |
| 青淀に色取り取りの紅葉葉は 追ひ風よふ意水遊び見ゆ |
| 緩やかに滝の岩つぼゐや広み 潺ぐ聲に耳傾けぬ |
| 八千種の色憐れなる山峡に 紅葉揺すりて風吹き渡る |
| 道奥の紅葉極まる森中に 時に思わぬ雁鳴く聞こゆ |
| 眺むれば哭きこそ渡る一群は 羽根を連ねて雁が音のゆく |
| 徒然と空ぞ浮き舟雁金は 名残り惜しくも雲隠りなむ |
| 手繰へやる聲は寂しく如何にして 儚き空にもて離るらむ |
| 此の年の木々の彩り遅けれど 下葉の影ぞ冬を知りける |
| 冬暮れに殘り少なき聲聴かば 惜しむ心の尽きせざるらむ |
| 色付きの今日を見限る凋む月 影に消ぬればその夜降りけり |
| 小春日も今日のみ暮れてそろそろに 冬の催ひ風の変はれば |
| 風厭ふ吾妻辺りは如何とて 思ひやりつる嶺向こうかな |
| 珠櫛笥箱に別け入る名は一つ 人に知られぬ夜の心に |
| 宓の闇胸の奥方一つ名は ひとものに咲く真珠の星よ |
| 聲にせばひとたび鳥と為りにけり 吾妻に向かへ名にし負へばや |
| 夕されば鳥の空音の漣と 麦星に寄せて言ノ風ぞ吹く |
| 伝ゑたき事言へぬまゝ消ぬべくは 雪を忘るゝ春の寂しき |
| 咲く花は徒なる方に移りゆく 吾妻の山よ名こそ惜しけれ |
| 雪失して花も散りなく無何の夜よ 憐れ恒とも其れこその星 |
| 成る程に我に張るけとも如何でかは 何時もをじなく手づつなりけり |
| 降る雨の止むとも先に初想ふ 日々を重ねし夜々を越しゆく |
| やつかれと掬ぶ狭間の繋ぎ目は 世界無辺の真中となりぬ |
| 交わす風は軈て波紋の綾なれば 本の心に真珠育む |
| 嗚呼然かと感ければこそ有明の 月見る迄に想ひこそやれ |
| やつこあれ呼び交はす名を想へこそ 何方なりとも還り給はむ |
| 意為る涙しほ垂る透ノ色 言ひ穢すべき言ノ葉もなし |
| 汝が頬をすがらに蔦ふ珠滴 温き掬ぶ手透りて消ゆる |
| 凄まじき憂き世の闇へ慄くと 凍ての無言に吾れと聴く息 |
| 陽は今し隠れて今日は極まれり 闇の黙に揺るゝ草の穂 |
| 草の穂の戦ぐ馨りの清やしさは 憂ひ慰む新た風なり |
| 悪戯に儚く過ぎし思ひ出は 音も光りも日々に見隠る |
| 淋しさの心に零す星ノ色 肖ゆに寄せれば二つ星呼ぶ |
| 見隠れも呼ぶ名は一つ連らの星 煌り交わすに笑みの嬉しき |
| 真珠星憂き世の闇は果てなくも 行く方灯す案内奏ずる |
| 描く日が如何で違へど過たず 心に燈す星が在りせば |
| 朝は来ぬその朝毎に戸を開けて 薄き一日の暁月を知る |
| 夜と朝の狭間に掬ぶ繋ぎ星 世界広こり曉緯始む |
| 朝の陽に生まれ出づる日然るべくと 思ゑる程に振るゝ心は |
| 混ぐわれば汚れ見難く黒めくも 星を倣ひて光り放たむ |
| 結び目の仄かに徴す嬉しさに 光り落ゆまし細石涙す |
| み代を経し真珠の涙何しかも 夜に瑆れと風は吹くらむ |
| 駒や疾け音を見つけに神楽月 ゐざ吹き行かな音姿観に |
| 人ゐゆき日ゆき月ゆき年はゆく 恋ひて弥らん冬の夜な夜な |
| 行き帰り見れど愛しき冬空に 光り在します真珠星かな |
| 何処ともてゐと還へるや汝が空へ 燁り交わさむゐさ参ります |
| 鈍色の薄雲暗き朝明けは 空も野山に色落ちにけり |
| 何と無く山の尾の辺も白むれば 冬も吾妻に立ち始めけり |
| 暮れ泥む半空に舞ふ風花に はだら色混ぐ秋と冬見ゆ |
| 薄暮れの光りも弱き冬影は 隔てぬ程に夜をとくらむ |
| 枯ら風に冬も寒しく音変へて 匂ひますらむ冱ての星かな |
| 凋む月濃くも薄くも程々に 星も静けし吾れも惺けし |
| 東路に月の舟さし出づる夜の 山も隠さぬ嬉しさを知る |
| 始まりの何やらゆかし冬の夜は 月といふ舟浮き寝すらしも |
| 白雪の冬に磨ける山なれば 神世の在わす静けさ思ふ |
| 古の灯し捨てたる空星の 光り淋しき残す透き色 |
| 熄みしゝ我が大君の高知らす 高天原に透き花の咲く |
| 咲き続く星の林や明けぬらん 透き色ながら朝ぞにほへる |
| 明けにある霞み透くの空き星よ あさき冬野に泡沫に咲く |
| 年の瀬に近づく毎に咲き惑ふ 月に日に異に冱てまさりつゝ |
| 寒々と朝は冬日となりぬれば 道をひたせる霜の花かな |
| 子の月に寒さ増しつゝ降る霜は 枯葉に凍り陽の色に散る |
| 霜華の咲きたまりたり冬朝の 冱つゝく陰の一群白し |
| 聲もなく尽くす色なく果無ぶも 光莉の零す星の華かな |
| はじまりの冬に凍てたつ中空に 青が光りの孤星出づ |
| 師走なる幣も取り敢へず関の山 行けど行けども限りなきまで |
| 一昨日も昨日も努めて寄る辺なく 暮れ待つ月の忙はしけり |
| 駆け捨てし日々をさ走る黄昏れに 柵なれぬ雲は流るゝ |
| 今日もまた明け暮れ通ふ道奥の 陽の静かなる淵の色かな |
| 遠方の七日の内は過ぎめやも 限りの月と言ひしばかりに |
| 四極山雪降る年と知らねかも 埜々疾き含める野辺の白梅 |
| 我が庭の枯れ枝動かす乾風に 昨日小春の夢は醒めきに |
| 道奥や今し一度戻りせば 紅葉見せばや心あるなら |
| 忙しくも形見がてらと立つ霧の 未だ干ぬ露に月寄するなり |
| 笹鳴くは気に吟ばず来ぬ冬雲雀 聞くに忽ち刻過ぎにけり |
| 多磨川に曝す言ノ風更々に 市尋ねゆく歌の愛しき |
| 帰り来て吾妻の暮れの夕日影 幽か掛かるも影凄まじき |
| 山越へし夷にありせば冬日暮れ 枯れ野處に鳥多集けゐる |
| 墨染の夕べの山を眺むれば同じ雲居の煙りと似たり |
| 上下になづさふ影や鳥に鳥 様子見し影紫一つ |
| 冬枯れの河透白し野を広み 息吐き余る笑まひつゝ者 |
| 虎落吹く冬木に止まる矢形尾の 其の秀つ鷹や蒼鷹なり |
| 空破る醜つ翁の狂れたる 荒言だにも鷹や啼き裂く |
| 追ふ毎に哀れ千鳥は彼方此方へ 翔けるに翔けて息吐き去にく |
| 夕猟に五百つ鳥立つ青鷹や 思ひ誇りて恕す事無し |
| 返り来て名のみを告りて鳥猟すと 見れば背向の野辺傾きぬ |
| 言ふ術の辿きを知らに招く由の 彼岸の淵の黄昏れ朱む |
| けだしくも月待つ影や蒼鷹 千鳥踏み立て咳れ告ぐる |
| 青満たる冬の暮れ方幕引きの 小暗し野辺よ泣かま欲しけれ |
| 寒き夜の風の宿りを誰ぞ知る 鷹も千鳥も闇に融けなむ |
| 影のなき山裾に聴くひと風は 朽たら野果ての虎落笛かな |
| 未だきより冬へ粧ふゆく景色 寒々白む山眠る比ろ |
| 心なく寒し流るは四極なり 横ほり臥ふせる水鑑かな |
| 散り散りの儚き影は誰が故か 水の鏡を並べて染むらん |
| 影ろひの水もせの朱はゐとをかし 徒なる色の移り易さは |
| 石疾る今も有り越せぬ滾つ瀬に 思ひ染めてき清明き影かな |
| 種々に色を変へつゝ水鏡 見し明らむる今日の貴さ |
| 吹く毎に水面にしづく紅に 君が御影を思ほゆるかな |
| 秋紅葉忘れた夢と思ひきや 風吹き分けてまたと見むとは |
| 今少し残り紅葉を散らしつゝ 水く鑑は重ね隠るゝ |
| 水な面に綾織乱る朽葉色 掻き逢へぬ間々千々に流るゝ |
| 寄られつる影も僅かな紅々に 還さぬ波の花かとぞ見ゆ |
| 淀破る落ち滾つ瀬に手形なく ひたすら戯る朽葉哀しき |
| 紅葉葉も名のみなりけり極ノ月 瀬々に寄するは冬の白風 |
| 岸影も澱むものなき此の川も 紅葉見捨てゝ冬なりにけり |
| 年を経て幾度と洗ふ鏡音は 朽葉の影も精ぐ風なる |
| 暮れ来月至り至らぬ風あらじ 細やぎ足るに冬の木々なる |
| 木も冬む面付き瘦すく足手影 吹きて問はばや言少なゝり |
| 聞かまほし冬の心を問はばやな 山見て帰る人も逢はなむ |
| きかまほしふゆのこゝろをとはばやな やまみてかへるひともあわはむ |
| 暫し待つなほ眺むらん冬月の 夕影照らす鑑あるなら |
| 月出でし鏡の面に影ふれて ゆるりゆるりと水魚のゆかしき |
| 水中のひれふる姿見てしより 澄める月影神錆にけり |
| 何處ある今し痛みに宛てどなく 手当てせざるも解らざりける |
| 侘びしらに名も無き涙零れては 体の草壁露と還へらむ |
| 陽炎ひの揺るぐ世界は蟒蛇に 建てあへぬ儘勾引さるゝ |
| 重なりしほとりの雨音あな安く ゐとど置き付き栂に玉響 |
| 聴きし音は似るも似つかぬ雨粒の 心拍つかに繁く叩くも |
| 雪雲に切れ目あるらし一筋の 日を蝕むに箒星ひく |
| 瞑る魔の真昼に徴す恒ノ星 見め輝ら輝らし真砂散りほふ |
| 涙星一つと一つ世を写し 檻の奧處に孤りそれだけ |
| 徒なれど雪には雪の雪乃色 人に知られぬ花や咲くらむ |
| 見付く事事失すものも志達ち 勝事成らしめ國こそ興す |
| 幾許の将の渡世も空蟬と 掌指し示し賜はむ |
| 何も無いみな綻びし手底よ 命籠りし種子こそ握れ |
| 此の篋努開くなとそこらくに 楯の言ノ葉堅めしものを |
| 女々しくも心も失せば柄も折れ 草薙ぐ劔新墾与するも |
| 逃げ水の張り子の城は消え遣らで 消え方ならぬ扨の生き物 |
| 忝彼方の瑆り眺む夜は 永き世を継ぐ夢の夢かな |
| 瞬くは星の囁き覚しくも 心由なに導べにはやる |
| 音にある私の心また聞こゆ 寄せては返す実ならまし |
| 天飛ぶや爪引く弦や遠音より 来鳴き響もし正鵠を射す |
| 不覚にも奥間に隠る降人の 倒るゝ処土摑むかに |
| 真そ日なる此の一日だに目を側む 問ひて正無ふ真墨乃鏡よ |
| 口惜しき一つと一つ助け呼ふ 後ろ見す影定めけらしも |
| 奇くも思ひの蔭は彼ノ岸の 無くなる聲を朝な朝な聴く |
| うつそ身は雪に埋もれし後ノ代の 聲も聴かねば意有りせぬ |
| 朝日子の生まれ知らせる遠き聲 在りて世の中後よ栄まし |
| 解けぬ間々何も無き間々万代の 捻みし手見つゝ忍びかねつも |
| 日に暮らす今草深き処また 意創りし敷きませ國と |
| 願はくは宜し神代ゆ露草の 写し意を色異にして |
| ゐさ詠ふ吾妻遊びの言ノ葉を 笛吹き遊ぶ言ノ風の謌 |
| よしや君埜々かた笑みて応へむは 掬びし綾の二つ巴と |
| よしや君埜々かた笑みの頷きに 重なる聲の鶯ぞ鳴く |
| よしや君埜々かた笑みの頷きに 乱れて花は綻びにける |
| よしや君埜々かた笑みの頷きに 吾も頷きかた笑み還す |
| 踏みゆきて雪の囁く冬の日は 軽き疼きの快き哉 |
| 雪華や消ゑ逢へぬとも春されば 花なき枝も風に溶くらむ |
| 今し見ゆ指先触るゝ一条の 珠の滴は仄かに赤む |
| 涙解く散るぞ禧き殘りなく 心かろさの程を知るかな |
| 何處かな何故痛む今もかも 過ぎがてにのみ人よ感ける |
| 何處より彼方の煌り深み射す 何處痛むと覚ゑざりけれ |
| 年に沿ふまた身を一つ重ねては ゑだも一枝と冬めきにけり |
| 泊洦舎浮き舟を呼ぶ誰そ彼に 運ばぬ風に聲のみ落つる |
| 年の瀬に問わず語りを河津らへ 落ちても水の泡とこそなれ |
| 瀬戸に立つ眺め長閑な金澤や 日の暮らゝくも嬉しかりけれ |
| 風に聴く此の年の事いづれとも 家路にあらば嬉しからまし |
| 瀬を早み十二月日を急ぎ走る 思ひ起こすか問わず語りを |
| 年明けの唯の思ひは秋までに 歌詠みあげばやむ事なしと |
| 祥ひは寒さ残るも梅の咲く 其の如月の望月の頃 |
| 鶴岡の春は夢殿日向置く 弥生を迎ゑ温む埴土 |
| 卯月なり春めく日々に桜桜 鷹も鳩為る山もとの里 |
| 早苗月朝の冷たき白埴に また藍を植う歳幸あれと |
| 忘れぬよ奏で優しき言ノ風は 星巡る歌水無月に聴く |
| 音眠る星と暮らせる夏の夜は 弥涼暮月空櫁歌ふ |
| 言ノ風の通ふ言伝て葉之月は 火なる律の風夕立燃ゆる |
| 菊乃月風や吹きさぶ秋空や 野分に野分気も安げ無し |
| 長月のうら嘆けましき蟲ノ聲 過ぎぬ暑さは年の可笑しき |
| 神無月紅葉せぬ間々吹き寄せに 害ふ汐と驚かれぬる |
| 年ノ瀬も寄る霜月にゆき惑ふ 月に日に異に春秋夏とは |
| 身を積みて照しおさめよ暮古月 難し年とも曇りあらすな |
| たれ籠めて年の行方も知らぬ間に 三十日近くに鐘の音聴こゆ |
| 習わしの行きつ戻りつ吹きし風 月の宝は十二乃稽古 |
| 願わくば稽古十二の習わしへ良き風の吹く新年なれ |
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