みなさまこんにちは、和歌所の和歌DJうっちーです。
毎回和歌の偉人をお招きするこのコーナー、二回目はかの御大「藤○定家」様です。
盛大な拍手でお迎えください!
御大登場
和歌DJうっちー ※以下(DJ):こんにちは、定家様! 首を長くしてお待ちしておりました。こんな下世話なインタビューにお付き合いいただき、まことにありがとうございます。
定家 ※以下(定):……(無言)
(DJ):あ、あの。のっけから怒ってます?
(定):別に。つーかなに、このきったねぇ会場。
(DJ):すみません、なにしろ予算がないもので、、
(定):ふん。どーでもいいけどボクチン、すっげぇ腹痛いんだよね、今。
(DJ):い、いまですか、ナウ?
(定):さっきの水、お前あれ毒入れたろ?
(DJ):んなわけないじゃないですかー (やりずらいなこの人、、、)
(定):で、ボクチンになにを聴きたいの?
(DJ):は、はい。やはり和歌のレジェンドですから、そうですね、どうすればいい歌が詠めるようになるか、おもに初心者のかた向けにお話しいただけますか。
(定):めんどくせーけど、まあいいよ。で、いくらくれるの?
(DJ):はい?
(定):わかんねぇヤツだな、ギャラだよ、ギャラ。
(DJ):(お金に困ってんのかな定家様、ずいぶんイメージとちがうなぁ)※DJなけなしのお金を渡す
(定):よし、いいだろう。ではボクチンの秘伝を教えてやろう。
(DJ):あざまっす!!
初心者が参考にすべき歌集
(定):まずな、知ってるだろ古今集、これ以後の勅撰集に採られた歌の変化をよ~く観察することだ。
(DJ):なるほど。そういえば前回、古今集の撰者貫之様がゲストでいらっしゃいました。
→関連記事「貫之様にインタビューしてみた ~古今和歌集 仮名序妄訳~」
(定):え、まじ!? すげーじゃん。でもまあ、貫之パイセンのはあんまり風情がないからボクチン的にはイマイチかな。だったら六歌仙、とくに業平、小町あたりを学ぶべきだな。
(定):んで話を戻すと、万葉集あるよな。これをどう評価してる?
(DJ):まあ一般的には素直でおおらか、分かりやすいなんて言われています。ということは、やはり初心者は万葉集から学べと?
(定):バカ、まったく逆だ。初心者ほど、古い歌に惹かれたりするもんだが、万葉集の言葉は古すぎて、初心者にはむしろ難解だ。それにあれは心が清らかすぎて、いまのお前らにはまぶしすぎる。
(DJ):そ、そうなんですか。明治以後は古歌といえばみんな万葉集でしたけどね、むしろ古今集はつまらないってレッテルが、、
(定):恥ずべき時代よのぉ~、ボクチンの宗家が残ってりゃこんなことにならなかったかもしれないが、まあいい続けよう。
有心体
(定):今日はこれだけでも知ってほしい、それは詠歌でもっとも大切なこと「有心」だ。
(DJ):有心、聞いたことがあります。定家十体の極意であると。でもなんかよく分かんないですよねー
(定):それは学者どもが深読みしすぎてるからだろ、ボクチンが言ってることはいたって単純、心を込めて詠めってことだ。
(DJ):なんか拍子抜けですね、たかがそんなことなんですか?
(定):いたよ、ここにも軽率なバカが。いいか、お前らは自分で考えるほど心を込めちゃいない。それに気づけなきゃ、いい歌なんて絶対にできないからな。これは単純でいて、すごい深いことなんだ。
(DJ):わ、わかりました。そこまでおっしゃるなら肝に銘じます。
心と詞
(定):では次、歌はなんで成りたっていると思う。
(DJ):なんでって、心と詞ですかね? 古今集の仮名序にそう書いてあったような。
(定):ふん、正解だ。で、こっからが肝心だから覚えとけ。心と詞の関係はな、鳥の翼のようなもんだ。この二つのバランスで、歌は良くも悪くもなる。そして当然ながら理想は、翼の均衡が保たれた状態だ。できるか?
(DJ):できるかっていわれましても、どうなんすかねぇ?
(定):しょうがねぇなぁ、じゃあこれをやろう。
(DJ):こ、これは!! って、なーんだ百人一首じゃないっすか。
(定):ばかやろうてめえ、もっとありがたがれって、なに? いまじゃこれを叩きまくってる? カルタ遊びで?
(定):まあよくわかんねけどいいや、ようするに受け継がれてんだな。
(DJ):はい、良くも悪くも! むしろ勅撰集なんて偉大なものは、見向きもされません。
(定):複雑な気持ちだが、ボクチンが言いたいのは一つ。この百人一首には心と詞が見事に調和した歌だけを集めてある。だから詠歌に悩んだら、まずこれを見ろってことだ。
(DJ):なるほどー、なんかすごいものに思えてきました。
(定):だろう。つーかそんな知識でよく和歌DJやってんな。
(DJ):……(無言)
無理に考えるな
(定):さて、初心者向けの話だったな。せめて一、二年は、さっき言った有心、そして心と詞。これだけを心に据えて歌よみに取り組んでほしい。
(DJ):なるほど、すべての基本になるわけですね。
(定):と言うと、初心者はむしろ無理に考えすぎてかえって歌が詠めないことになる。だから慣れるために、まずは思い浮かんだことを詠んでみたほうがいいんじゃないかな。それと注意してほしいのが、有心有心といって、わざとそれ風な歌を詠むようなことは絶対やめろ。
(DJ):わかりました。ん~、できるかなー?
(定):まあな、わかるよ。ただこのボクチンだって、最初(「初学百首」)からいい歌が詠めたわけじゃない。そう思うと、ちょっとはやる気もでるだろ。まずは一首詠んでみろって。
歌の師
(DJ):ありがとうございます。なんだかやる気と勇気が出てきました! なんか最初はやりづらい人だと思いましたけど、さすが定家様ですね。やっぱすげぇっす。
(DJ):そこで相談なんですが、このまま私の歌の師匠になっていただけませんか?
(定):OKといいたいところだが、わりぃな。
(DJ):えぇー、やっぱギャラですか?
(定):ちげぇよ、これでも正二位の公卿だぜ、ボクチン。
(定):いやそもそもな、和歌を学ぶのに師匠なんてのはいらないんだ。ただ昔の歌を師匠とすれば十分。
(DJ):そうなんですか! なんか今の一言、すげー嬉しいです。なんでって、現代に和歌なんて古臭いものやってる人はいないんです。
(定):そっか、残念だな。でもな、さっき言ったように心を古い歌に染めて、詞を昔の大先輩に習えば、歌よみになれないやつなんていないんだ。
(定):古いものだからってビビることはないぜ、俺たちは同じ心でつながった日本人同士なんだからな。
(定):それにいっぱいあるじゃないか、歴々の勅撰集が、源氏物語が、白氏文集が。本屋やネットで簡単に見られるなんて、お前らむしろ恵まれてるぜ。
(DJ):うっぅ、おっしゃるとおりです。ありがとうございます!
エンディング
(定):少ししゃべりすぎたな、疲れたから帰るぜ。
(DJ):最後に、一言お願いします。
(定):なんだ?
(DJ):今の政治情勢について…
(定):紅旗征戎吾ガ事二非ズ!!!
(DJ):かっちょいい~
(DJ):きょ、今日はあでぃがどうござびました、感動ぢました(ズッズ ※涙を啜る)
(定):アディオス。
(DJ):これにて、定家様へのインタビューは終わります!!
(書き手:歌僧 内田圓学)
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