『日暮れまで僅かに残っていた庭の萩の花、月が出てきたので見に行ってみるとなくなっていた。ああ悲しいなあ』。他愛もない歌である。しかしすごく引っかかる歌である。花の儚さを歌にするのならこの時期なら朝顔があるだろう。しかし実朝は萩を選んだ、伝統的詠みぶりをほとんど無視して。それは今日の歌が写実であることだが、とするとこれは恐ろしい。何とはなしに口に出る絶望、二十歳そこその青年源実朝という人間は、常日頃から虚無を生きていたということに他ならない。
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