萩の花くれぐれまでもありつるが月出でて見るになきがはかなさ(源実朝)

『日暮れまで僅かに残っていた庭の萩の花、月が出てきたので見に行ってみるとなくなっていた。ああ悲しいなあ』。他愛もない歌である。しかしすごく引っかかる歌である。花の儚さを歌にするのならこの時期なら朝顔があるだろう。しかし実朝は萩を選んだ、伝統的詠みぶりをほとんど無視して。それは今日の歌が写実であることだが、とするとこれは恐ろしい。何とはなしに口に出る絶望、二十歳そこその青年源実朝という人間は、常日頃から虚無を生きていたということに他ならない。

(日めくりめく一首)

和歌の型(基礎)を学び、詠んでみよう!

代表的な古典作品に学び、一人ひとりが伝統的「和歌」を詠めるようになることを目標とした「歌塾」開催中!

季刊誌「和歌文芸」
令和六年冬号(Amazonにて販売中)