さくら花ちりぬる風のなごりには水なき空に浪ぞたちける(紀貫之)

『桜の花が散った風の後には、水のない空に浪が立っているようだ』。適訳はこうだが少々説明を加える。まず花の色を見立てて「白浪」とする場合がある、これは桜の花が風に舞い散って白浪が立っているように見える、水なんてない空なのに。という趣向に富んだ歌なのだ。古今和歌集では珍しい「絵画的」な歌だといえる、しかも詠み人は紀貫之。理知的だと揶揄される彼だが、このような歌も詠めるのかと驚かされる。専門家人とはいろんなバリエーションが詠めてこそなのだろう、ちょっと説明臭いのはご愛敬だ。

(日めくりめく一首)

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