古今和歌集 恋一【496】「人しれず思えはくるし紅の 末摘花の色にいでなむ」(よみ人しらす)
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あの花見から、ひと月はたっただろか。
のぼせ上がっていたが、この状況を少しは客観的に眺められるようになった。
あの女は本気になってはいけない女だ。
それもそうだろう、私の兄の婚約者なのだから。
しかし世の中には、頭で理解してもどうしようもないことがある。
兄の婚約者だからとて、恋してはならない道理があるか?
欲しいものは欲しい、これは私の真っ直ぐに純粋な欲求だ。
こうしてまた堂々巡りが始まる。
してはならない恋。秘して思うしかないのだろうか。
しかしこのままでは、そうあの末摘花の美しい紅の色のように、遅かれ早かれ思いは表に出てしまうことだろう。
恋に落ちた男はただ無力だ。
(書き手:歌僧 内田圓学)
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