「もみぢ」を現代ではほとんど「紅葉」と記します。しかし古代の詩集である『万葉集』においては、「黄葉」という表記が圧倒的に多く使われ、赤い紅葉を指す表現はほとんど見られません。
「秋山の黄葉を茂み惑ひぬる妹を求めむ山道知らずも」(人麻呂)
この違いについて複数の説があります。ひとつは古代日本の人々は楓などの赤い紅葉よりも、萩などの黄色い葉を好んでいたため「黄葉」と表記したという説。
また別の説では、万葉の歌人らが影響を受けた六朝詩が「黄葉」を主に用いていたために時代のスタンダードとなったが、その後に盛唐時代以降の漢詩文、例えば『白氏文集』などでは「紅葉」がよく使われ、この影響を強く受けた平安時代以降になると「紅葉」に置き換わり定着したという説です。
どちらの説も正しいと思いますが、白詩を礼賛しまくる平安歌人としては、後者の説がより重要な理由であったのでしょうね。
「林間煖酒焼紅葉 石上題詩掃緑苔」(「送王十八帰山寄題仙遊寺」 白)
(書き手:内田圓学)
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