和歌だけでなく古典を読む時にぜひ知っておきたいのが「官位」です。
官位とは朝廷内の序列である「位階」と、就くことが出来る「官職」の総称で、飛鳥時代に定められた冠位十二階が大宝令などによって体系的に整備されたものです。
位階は正一位から少初位下まで30のランクに分けられ、このうち五位以上の位階を持つ者が貴族と呼ばれる人達です。
ちなみに三位以上の超エリートを公卿といいましたが、こんな人は20~30いたかどうかと言われています。
当時の平安京の人口がおよそ10万人くらいだといいますから、割合にしてわずか0.0x%。
源氏物語や枕草子など、私たちに伝わっている貴族社会を舞台にした物語というのは、当時のほんの一握りの特権階級の狭い物語に過ぎないことが分かります。
平安時代の女性の多くが十二単を着てたなんて勘違いをしていたら、大やけどをしますね。
ところで、紀貫之や藤原定家など、歌人という名で残っている方々の官位って気になりませんか?
そこで作成したのが「歌人と官位一覧表」です。
下の一覧表をみれば、歌人レベルが一目瞭然です!
まず一見して分かるのは、古今和歌集選者の紀貫之と、新古今和歌集選者の藤原定家の官位レベルが全く違うことです。
両者の間には300年の隔たりがありますが、時代が下るにつれて「歌の地位が高まった」とも言えますし、もはや朝廷は「歌など文化的ことでしか地位を保てなかった」とも言えます。
そんな色んな視点で、この「歌人と官位一覧表」を眺めてみてください。
「歌人と官位 一覧表」
位階 | 官職(太政官の官位相当) | 歌人 | 歴史上の有名人 | |
---|---|---|---|---|
1 | 正一位 | 太政大臣 | 橘諸兄、藤原仲麻呂、三条実美 | |
2 | 従一位 | 藤原良経 | 藤原良房、藤原道長、平清盛、豊臣秀吉、徳川家康 | |
3 | 正二位 | 左大臣、右大臣 | 源実朝、藤原定家(新古今集撰)、藤原為家(続後撰集撰) | 藤原不比等、藤原時平、藤原公任、藤原行成、源頼朝、織田信長 |
4 | 従二位 | 内大臣 | 菅原道真、藤原通俊(後拾遺集撰)、藤原家隆 、大伴旅人 | |
5 | 正三位 | 大納言 | 藤原俊成(千載集撰) | |
6 | 従三位 | 中納言 | 藤原顕輔(詞花集撰)、大伴家持(万葉集撰)、源頼政、菅原清公(凌雲集撰) | |
7 | 正四位上 | 源俊頼(金葉集撰) | ||
8 | 正四位下 | 参議 | ||
9 | 従四位上 | 大弁 | 在原業平、小野岑守(凌雲集撰) | |
10 | 従四位下 | |||
11 | 正五位上 | 中弁 | 清原元輔(後撰集撰) | |
12 | 正五位下 | 小弁 | ||
13 | 従五位上 | 少納言 | 紀貫之(古今集撰) | |
14 | 従五位下 | 山上憶良、鴨長明 | 真田信繁 | |
15 | 正六位上 | |||
中略 | ||||
30 | 少初位下 |
※「太政官」とは朝廷の政治の中心で現在の内閣にあたる組織です
(書き手:歌僧 内田圓学)
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