「枕に残る、梅の移り香」。ここだけを切り取ると妖艶な後朝(きぬぎぬ)の歌ように思える。しかし事実は、相手を欠いたわびしいひとり寝。梅の香りは、主も知らぬ垣根の花の匂いが移った故であった。詠み人は西行、言わずと知れた流浪の歌人だ。恋の匂いを漂わせつつ、野宿のあはれを歌う。実感であるかもしれないが、もしかしたら俳諧を狙ったのかもしれない。いずれにせよ、平安歌人でこんな歌がきまるのは西行しかいない。所収は「山家集」。西行は桜をこのうえなく愛したが、この歌集には同じように慕情を寄せる梅の花がいくつも残されている。
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