春くればたのむの雁もいまはとて帰る雲ぢに思ひ立つなり(源俊頼)

昨日の流れで今日は金葉集の選者、源俊頼の一首をご紹介しよう。『春になったので、たのも(田の面)の雁が今まさに帰らんと、雲の旅路に飛び立ってゆく』。雁は秋の鳥だが、春に詠まれる場合「帰雁」、つまり故郷である北国へ帰る姿が詠まれる。「たのも(田の面)」には「頼む」が掛けられ、あてにしていたものとの別れ、また「立つ」は「思い立つ」と「旅立つ」の意味合いがあり、その瞬間を捉えた歌というわけだ。俊頼は和歌の二大巨頭、貫之と定家を繋ぐ平安中後期歌人を代表するキーパーソン! この歌は言葉(技巧)と心(抒情)が抜群に調和しており、まさにそれを物語っている。

(日めくりめく一首)

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