山鳥や鹿にも雌雄別離の悲哀が詠まれるが、鴛の場合はその寂しさが甚大だ。『水に数を書く、なんて出来やしないことを毎晩続ける』それほどの虚しさだというのだ、鴛の独り寝は! 昨日の崇徳院に勝らずとも劣らない、孤絶の極まった歌である。詠み人は飛鳥井雅経、新古今撰者の一人であったが、他の連中に比べて政治的にも歌風的にも難なく中立であった。今日の歌も新古今好みの無常観を湛えつつ、伝統的なモチーフ※を巧みにバランスさせている。
※「行く水に数書くよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり」(よみ人知らず)
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