鳥は鳥でも今日のは鵲(かささぎ)、百人一首の六番歌で知らぬ者は少ないだろう。新古今に採られた家持歌だが、しかしこれは素直でない。「かささぎの渡せる橋」とは牽牛と織姫を結ぶ七夕の夜にあるもので、和歌の絶対のルールに従えば「秋」以外に詠んではならない。しかし歌の情景は霜輝く「冬」の夜だ。だからこれを宮中の階と見立てるのが通説になっているが、正直これほど野暮の極みはなかろう。厳冬の夜空に輝く満天の星、これこそが家持の感動のすべてだ。張継の詩※も意識にあったのかもしれないが、家持にみた伝統破格たる実直の美。これにこそ定家をはじめ新古今撰者らは惹かれたのだ。
※「月落烏啼霜満天」(張継)
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