いよいよ年が明ける、待ち望んだ春は目の前だ。しかしである、人間の思考はそう単純でないらしい。綻ばんばかりの花を目の前にして、一度伸ばした手を引っ込めてしまう。『この夜よどうか明けないでくれ! 僅かでもいい、永遠の別れとなるこの年に浸っていたいから』。なにをためらうのか、なにを恐れるのか? 今日も詠み人は源実朝、宇治川のように年月は疾く疾くと流れる。その感慨も束の間、暮れゆく今宵は漆黒の闇に覆われはじめた。
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