六百番歌合題を詠む:秋上・中・下、恋一・二・三

秋上

 残暑 圓学

をぎに吹く風は秋とは思へねどそれでもたまる末の朝露

 乞巧奠 圓学

ほしあひの小夜ふけぬらむ消えかへり露こそまされにはの灯し火

 稲妻 圓学

宿るべき露あまたある袖さへもたへてかよはぬ宵の稲妻

 鶉 圓学

月ばかりすみこそわたるふるさとに心みだれと鶉なくなれ

 野分 圓学

野分して露くだかれし影草にやがて聞こゆる虫の声こゑ

秋中

 秋雨 圓学

秋されば窓うつ雨もおとろへて身にしむものは涙なりけり

 秋夕 圓学

暮れゆけば野辺もひとつに露おちてわが袂よりなきはじめけり

秋田 圓学

秋はなほこころかけよと小山田の引板うちながら風ぞ吹きける

 鴫 圓学

露なれし袖より鴫のたつ音にあはれ旅とはいのちとぞ知る

 広沢池眺望 圓学

ながめやる池のまがきにたちのぼる菊ともわかぬ広沢の月

秋下

 蔦 時雨

つつ音にも秋は知られけり軒はふ蔦はあへずもありなむ

恋一

 初恋 圓学

たきそめし思ひありそのけぶりこそ行く方もなく燻りわびけれ

 忍恋 圓学

涙川ながれてぞ憂き床さえてこほれる袖の下のさざなみ

 聞恋 圓学

天つ空はるかに人をきくの星ながめてのみや恋わたるらむ

 見恋 圓学

みちのくの安積の沼の草なれやかりそめ人を恋そめつらむ

 尋恋 圓学

三輪山の門の道さへ知らなくに思はぬ宿をいかに訪はまし

恋二

 祈恋 圓学

寄るべなき恋路のはてに貴船川たま散る袖をあはれとやみむ

契恋 圓学

恨むとはたとへば人のいつはりの重ねてこそはうべも言ひけれ

 待恋 圓学

わりなしや十編のすがごも七編には頼までやどる十六夜の月

 遇恋 圓学

さらぬだに涙の袖ではこきものをにひ手枕の後や知るべき

 別恋 圓学

ゆく末は別るる道と知りながら越えしものかは逢坂の関

恋三

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