靡きかへる花の末より露ちりて萩の葉白き庭の秋風(伏見院)

古今から新古今に至る過程で複雑さを増した和歌文学であったが、さらに時代を下った玉葉・風雅和歌集になると難しいところがめっきりなくなって親しみやすい。これは新古今とは正反対に風景またその感想が純粋に歌われているためだ。むしろなまじっか古歌の教養があるとかえって意を汲みづらかったりする。今日の歌もそんな一首、靡き返って白色を見せるのは「葛の葉※」が常套であるのだが、ここでは「萩」が詠まれている。これに疑問を持ち続けると、歌意の裏の裏の裏まで探ることになり収拾がつかない。無垢な写生なのだ、これは。伏見院が見たのは露と萩とそして秋風、白一色の夢幻にすぎない。

※「秋風の吹き裏返す葛の葉のうらみてもなほ恨めしきかな」(平貞文)

(日めくりめく一首)

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