降る雪の雨になりゆく下消えに音こそまされ軒の玉水(藤原為家)

一転して今日の歌は素晴らしい、藤原定家の嫡男為家である。『降る雪が雨に変わってゆく。屋根の雪も下から溶けはじめて、軒の雨だれの音がほの強くなってきた』。雪は次第に姿を移しつつある、雨となり屋根からも落ちはじめた。むろん春が近づいているのである。極みつきは「玉水」だろう、日ごとにまさるその音はまさに春の足音だ。採られた玉葉集にも類をみない繊細な写実、なにより春を望む心で溢れている。為家の感性が冴えわたる作、父定家をもついに越えた珠玉の一首だ。

(日めくりめく一首)

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