短夜のふけゆくままに高砂の峰の松風吹くかとぞきく(藤原兼輔)

「高砂の峰の松風」には何やら新古今風の艶なる声調を覚えるが作者は藤原兼輔、後撰集に採られた歌である。ということで内容はいたってシンプル、「夏の夜、深養父が琴ひくを聞きて」という詞書に明白だが、『美しい琴の調べを更けゆくほどに聞きほれていると、まるで高砂の峰の松風が吹いているようではないか』と、琴の名手であった清原深養父の調べを全力で讃えた歌だ。ただあくまでも「夏部」の歌であるので、歌集的な見どころはあっという間に更けてゆく「夜の短さ」にある。
ところでご存知であろうか、かの紫式部は詠み人兼輔の曾孫であり、清少納言は深養父のそれであることを。平安時代を代表する才女はライバル関係にあったが、その曽祖父は夜どおし風流を楽しむ親しい間柄であったのだ。

(日めくりめく一首)

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