梓弓いるさの山は秋霧のあたるごとにや色まさるらむ(源宗于)

今日の歌はいかにも三代集らしいユーモラスな歌だ。梓弓は「入佐山」の枕詞、入佐山には「射る」が掛詞になっており、霧が「当たる」の縁語を導く。ちなみに入佐山という歌枕は兵庫県豊岡市の此隅山と伝わるが定かでない。さてこれを適役すると、『入佐山の木々は矢が当たるように、秋の霧があたるたびに紅葉の色が濃くなってゆく』となる。露が置くと同様の発想で、霧があたると紅葉が促進するという趣向に面白味がある。ところで同じ水蒸気の凝結現象を秋は「霧」と言い、春は「霞」と呼ぶ。一紀一景という和歌の原則は絶対だ。

(日めくりめく一首)

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