梅が香を袖にうつしてとどめては春はすぐともかたみならまし(よみ人知らず)

花は散る、春はゆく。それでも花を、春を留めたい。思いはわかる、だがそんなことができようか? ある歌人は答えた、「できる!」と。『香を残すのだ、わが袖に梅の香を。さすれば春は過ぎても、思い出として残しておくことができる。たぶん…』。古人の浅はかな知恵と笑えるだろうか? そんなことはない。今やスマホのカメラでなんでもパシャリだが、そんな思い出、振り返っても心はほとんど動かない。私は思う、「匂い」や「声」、視覚以外の感覚のほうがよほど鋭く、過去の一瞬をフラッシュバックさせるのだと。

(日めくりめく一首)

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