梅が香に昔をとへば春の月こたへぬ影ぞ袖にうつれる(藤原家隆)

日本人として、鎌倉時代初期に「新古今和歌集」という言葉の芸術作品群が生まれたことに驚愕する。それにひきかえ、現代の言葉のなんと貧しいことだろう。しかし一方で、いやそれゆえ新古今はとっつきにくく難しいとされる。私としては、それは鑑賞方法が間違ってるのだと思う。新古今は歌集にあって歌集にあらず、画集なかでも心象風景を集めたものだと理解いただきたい。たとえば日本人画家であれば東山魁夷を西洋画家であればシャガールあたりを連想すれば明るいだろう。今日の作者は藤原家隆、定家と並び称する新古今画伯だ。梅の香にありし人を問う、答えやしないが袖には月が映っている。つまりはそれが答えなのだ。言葉にならぬとはこのような歌をいう。

(日めくりめく一首)

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