木枯らしに木の葉の落つる山里は涙さへこそ脆くなりぬれ(西行)

ゆく河の流れ、よどみに浮かぶ泡沫。無常を象徴する現象はいくらでもあろうが、その最たる事例が秋の木の葉ではなかろうか。『木枯らしで木の葉が次々と散ってゆく山里、私の涙も脆くなって止めどなく落ちてゆく』。詠み人は西行、春の頃にはまだ咲かぬ花を求めて山里を駆け巡った僧にあるまじき執着の人間に、むなしき落ち葉はどのように写ったのだろう。いや写りはしなかった、溢れる涙に潰されて彼の眼は光を失ったのだ。その回復は、もはや春の花をもってしか成しえない。

(日めくりめく一首)

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