月残る寝覚めの空のホトトギスさらに起き出でて名残ぞを聞く(京極為兼)

ここ数日、意味深のホトトギスが続いたせいだろうか、この歌には心地よい脱力感を覚える。『寝覚めると月が残る空にホトトギスが鳴いている。起き出でて、その名残の声を聞くとしよう』。この歌に見える有明月には恋の匂いなどまったくない、ただ目覚るままに、目に飛び込んできた朝の風景。しかし月は衰えてみえる、夏の太陽が日に日に勝るのだ。なるほど、ホトトギスが鳴くのもあとわずか、その名残をしっかりと聞いておこう。なんともゆったりとした調べである。しかしこのような歌ならぬ歌は、八代集にはほとんど見られない。それでもやはり和歌であるのは、歌に有閑の風雅があるからだ。

(日めくりめく一首)

和歌の型(基礎)を学び、詠んでみよう!

代表的な古典作品に学び、一人ひとりが伝統的「和歌」を詠めるようになることを目標とした「歌塾」開催中!

季刊誌「和歌文芸」
令和六年冬号(Amazonにて販売中)