峰の霞ふもとの草のうすみどり野山をかけて春めきにけり(永福門院)

京極派の歌はつとめて明るい、そして分かりやすい。『山の峰には霞がかかり、麓には薄緑の若葉が萌えだして、野山いっぱい春めいてきた!』。思わずインスタに投稿したくなるような、誰もが共感できる美しい景色、これが京極派という新風だ。京極歌風はいわゆる「写生歌」である、見たまま感じたままを歌に詠んだのだ。なんて聞くとだれでも簡単に歌を詠めそうな気がする。しかし、単なる写生は「詩」にはならない。古今や新古今は言葉の暗喩や抒情に詩的要素を備えていた。これらを排除した京極派はどうしたか? 光や空気の色、アングルにそれを求めたのである。今日の永福門院の歌は、「うすみどり」と「野山をかけて」に見どころがある。

(日めくりめく一首)

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