山もとの鳥の声々あけそめて花もむらむら色ぞみえゆく(永福門院 )

今日の歌はなんだか新鮮! と感じられる人は和歌ファンであるが、それが百人一首歌に集中している人かもしれない。和歌史的に百人一首の功罪はいろいろあれど、とくに罪深いのが八代集以後の歌、歌人が知られなくなった点だ(百人一首は古今集から続後撰集からのみ撰歌がなされている)。今日の歌人「永福門院」はその代表的な一人。
永福門院は京極派の旗手として新風を形成、かの三島由紀夫が心酔したことでも知られる。「声々(こえごえ)」に「むらむら」、言葉が重んじられた伝統和歌で、幼稚にもなりかねないオノマトペをこの歌はふたつも取り入れている、極めて大胆だ! 京極派は花鳥風月の写実的な捉え方に革新があったが、表現たる言葉もそうであった。永福門院が歌がもっともっと知られれば、古典和歌の印象もぐぐっと明るくなるだろう。

(日めくりめく一首)

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