夕されば衣手寒しみ吉野の吉野の山にみ雪降るらし(よみ人知らず)

二十四節季の「大雪」も過ぎて、朝夕の空気はすっかり冬の厳しさだ。『夕方になると袖のあたりから冷えてくる。きっと吉野山では雪が降っているのだろう』、「吉野」といえば桜のイメージが強いかもしれないが、百人一首の坂上是則歌※にもあるように平安も中期くらいまでは断然「雪」の名所で通っていた。今日の歌では袖口の寒さで吉野の降雪を知るという苦しい設定であるが、それだけ吉野は雪を象徴する場所であったのだ。ちなみに「吉野」の字が重複しこの類を「歌病」と言って本来嫌われたが、「Yo」と「Mi」の軽妙なリズムがそれを感じさせない。

※「朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪」(坂上是則)

(日めくりめく一首)

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