咲きそむる梅のたちえにふる雪のかさなる数をとへとこそおもへ(藤原俊忠)

今日の詠み人、藤原俊忠の名を知る人はそう多くないだろう。彼の子は千載集の選者となり、孫は新古今と新勅撰二代の勅撰集の編纂を賜った。そう、藤原俊成の父であり定家の祖父であったのがだれあろう、この俊忠なのだ。『咲き初めた梅に降る白雪。その重なる数ほどの、あなたの訪れをまっています』なんと健気な女心…。と、ちょっとまて。言うまでもないが、俊忠は男である。オッサンの待つ恋とはいかなるものか? 実はこれ、詞書にはある男に贈った歌とある、その男の名は源俊頼。ようするに「恋」ならぬ、俺んちの梅を見に「来い」というインビテーションだったのである。当代きっての歌人による、風雅な春の贈答歌。俊忠はさらに、自宅の梅の枝を折って付けたというからこころにくい。

(日めくりめく一首)

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