世中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし(在原業平)

咲くまでは、いつ咲くのだろうと気にかかり、咲いてはいつ見に行こうと気にかかり、散ってはいつ散り果ててしまうのかと気にかかる。桜というのはあってありがたいが、これのおかげで不要なストレスを抱かされ続ける、そんな罪深い存在でもある。
今日の詠み人は在原業平。この歌は桜に盲目の愛を寄せる古典和歌にあって珍しい詠みぶりではあるが、十分共感できる内容である。さすが「心あまりて言葉足らず」※の業平である。そして彼だからこそ、歌にある「花」を「女」に置き換えてみて、なおいっそう共感してしまう。

※「在原業平はその心あまりて言葉たらずしぼめる花の色なくてにほひ残れるがごとし」(古今和歌集 仮名序)

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