ホトトギス空に声して卯の花の垣根も白く月ぞ出でぬる(永福門院)

抒情歌である和歌は一見平明な風景のスケッチも、なんらかの心的象徴を含むと昨日説明した。では今日の歌はどうであろう? 『空にはホトトギスの声がして、卯の花の垣根に白い月が出てきた』。この歌について言えば、スケッチつまり純粋な写生歌である。どこに判断の基準があるかといえば、詠み人や採られた集に頼ると早いが、やはり本質的には歌の主題である。描いた風景によって作者が何を言わんとしているのか、詠歌の動機で判断するのだ。今日のホトトギスと有明の月からは思慕の念は得られない。歌に取り合わされた「卯の花」を思い出してほしい、気高き純白、それが群咲く垣根の間を縫って白々と現れる月、この感動的な出会いに作者の全霊が込められている。

(日めくりめく一首)

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