ホトトギス人まつ山に鳴くなれば我うちつけに恋まさりけり(紀貫之)

さて、ようやく和歌らしいホトトギスの声調が聞けた。『ホトトギスが松の山で鳴き始めると、愛しい人を待つ、私の恋心はむしょうに掻き立てられる』。歌中に「恋」の文字が見えるように、実のところこれは初夏の叙景に寄せた恋の歌だ。よって「松山」には「待つ」が掛けられていることも分かる。しかしなぜ、このような歌ぶりになるのか? これを理解するには、歌語の設定を知る必要がある。ホトトギスの鳴き声をご存じだろうか? 「テッペンカケタカ」や「特許許可局」など面白く聞きなされるが、和歌ではこれを聞くと「恋人また古里へ寄せる思慕が助長される」と、理解される。ホトトギスは口の中が赤いために鳴いて血を吐くと言われるが、中古の歌人達はまさにこれを心血を注ぐ激烈な切望と見たのだ。

(日めくりめく一首)

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