み吉野の山のあなたの桜花ひとに知られぬ人やみるらむ(順徳院)

順徳院は百人一首を最後を飾る※が、現代の存在感はいまいち薄い。やはり父が偉大すぎたのだろうか? 後鳥羽院とともに討幕を企てるがあえなく失敗、配流先の佐渡で無念の死を遂げた。ちなみ定家が編んだ「百人秀歌」にはこのふたりが採られていない。だから今に伝わる「百人一首」は、鎌倉方のほとぼりが冷めた後世に改訂(為家の説がある)が入ったものだ。
この歌はおもしろい。『人に知られぬ人が見るのだろうか』とは、いったい誰が見るのだろうか? 西行のような風狂人、もしかしたら自らからあくがれ出るたましい? いずれにせよ想像力を掻き立てられる。
順徳院には「八雲御抄」という歌論も残る、実のところ父を超えるほどの歌狂いであったのだ。私たちはもっと知るべきだ、順徳院の歌と百人一首のその先を。

※「ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり」(順徳院)

(日めくりめく一首)

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