見わたせば山もとかすむ水無瀬川ゆふべは秋となに思ひけむ(後鳥羽院)

「秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに…」とはだれもが暗唱させられた枕草子第一段の一文であるが、新古今でも「三夕の歌」が賞美されるように、『夕暮れといえば秋!』というのが当時の詩情的には常識化していた。このように、いったん確固に定型化(ルール)がなされると、それを頑なに順守するのがたいていの平安歌人たちである。がしかし、そんなルールなんてクソくらえというようなジャイアニズムの人も稀にいる、その代表格が後鳥羽院だ。この歌は夕暮れ時、おぼろに霞む春の水無瀬川の感動が率直に詠まれている。しかしそれ以上に興味深いのは下の句、『夕暮れは秋だなんて何言ってやがんだバカやろう!!』。後鳥羽院のアグレッシブさがひしひしとと伝わってくる。

(日めくりめく一首)

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