ふる雪のみのしろ衣うち着つつ春きにけりとおどろかれぬる(藤原敏行)

後撰和歌集の一番歌である。本集編纂においてはじめて宮中に「和歌所」がおかれ、これに命じられた五人(梨壺の五人)は万葉集訓釈の任も成した。いよいよ和歌は宮廷文学のその頂きに至ったのだ。
歌であるが、目につくのは結句「おどろかれぬる」ではないだろうか。蓑代衣を着ていたら春が来たと『びっくりしちゃったなぁ!』ではない。和歌で「おどろく」は「はっと気づく」の意味で用いられる。また詞書きによると「正月一日、白き大袿をたまはりて」とあり、蓑代衣に「白衣」が掛けられていることが分かる。存外風情のある歌である。

「日めくりめく一首」

和歌の型(基礎)を学び、詠んでみよう!

代表的な古典作品に学び、一人ひとりが伝統的「和歌」を詠めるようになることを目標とした「歌塾」開催中!

季刊誌「和歌文芸」
令和六年冬号(Amazonにて販売中)